FOSTER Alliance Program 自作ヘッドホン応募作品 (2019)
FOSTER Alliance Program 自作ヘッドホン応募作品 (2019)
2019年、フォスター電機がフジヤさん経由で40mm/9mmドライバをコンシューマに供給し、そのドライバを使用した自作ヘッドホン・イヤホンをフォスター電機が審査を行うという凄まじい企画が立ち上がりました。
その名も「FOSTER Alliance Program 自作イヤホン・ヘッドホンコンテスト 」。私も喜び勇んでドライバを購入し、ヘッドホンを製作することにしました。
要件は非常にシンプルで、40mm or 9mmドライバどちらかをユニットに組み込んだヘッドホンorイヤホンを製作することとだけ定義されていました。
試しに適当なヘッドホンにユニットをポン付けしてみるとまあ音質がいいことがわかります。ジャンク品のヘッドホンを分解して取り出したり、あるいは中華から取り寄せできるユニットよりも遥かに信頼性が高いですし、これを使えばいい作品が作れそうです。
しかも応募された作品はフォスター電機さんの方で周波数特性を測定し、そのグラフとエンジニア様からのメッセージをいただけるとのこと。
趣味で作る作品にそこまでしていただけるとは、願ってもない、夢のような企画です。
しかし、しかしです。
そうして高品質なドライバが供給され、メーカーが周波数特性まで測定してくれるとなると…コンテストの評価項目として、音質が重要視されているのが肌感として感じられたのです。
それ自体が悪いことではないのですが、せっかく要件がドライバ指定のみというゆるいコンテストなのに、音質評価という軸に従って競い合うのは、自作の自由度を狭めていないか?と思いました。
私は「自作」が大好きです。
自作の何が好きかと問われると、「自由に作れるから」という一言につきます。
法の範囲内なら何をしたって良い。自分の中の魂のモノサシだけを基準に最高と思うものを作ってしまえるのです。
こんなに楽しいことはありません。
そして同じ気持ちで作られたモノを見るときほど心躍ることはありません。
なので私は、自由に作れる自作を愛しています。
一個人の興味や好奇心、あるいは狂気から生まれた発想を形にできるのが、自作の醍醐味であると私は思います。自由に作るから自作なのです。
何をしてもいいという意味では、ドライバ指定だけという曖昧さは自作ヘッドホンコンテストにふさわしい、心地よいおおらかさを感じました。
ですが音質評価などという軸を作って自由度を狭めるのであれば、自由を取り戻さなければなりません。
そこで全く別ベクトルからアプローチすることを思い立ちました。
ヘッドホン内部に小型のArduino、MP3プレイヤー、音声信号検出用の回路を組み込むことにしました。
再生元から音声信号を流すと、回路がArduinoに入力信号を渡し、MP3プレイヤーの再生命令を送ります。
つまり、再生した音源と全く別の音源が再生されるヘッドホンを作りました。
結果的に、どんな音源を再生してもハードオフのBGMが流れるヘッドホンが爆誕しました。
JPOPを聴いてもハードオフ。フルオケを聴いてもハードオフ。デスメタルを聴いてもハードオフ。
もちろん特性測定用のスイープ音源を流してもハードオフです。
ドライバーの音質なぞ知ったことではありません。
音質の指標である周波数特性という評価にとらわれないヘッドホンの完成です。
フォスター電機様からは、測定不能という大変名誉あるグラフとコメントを頂戴しました。
コンテスト優勝者にも(強引に)聴いていただき、規格外賞という賛辞をいただいたので一旦ヨシとします。
このマインドが共有できて良かった。
これからも、製作しているケーブルのように真面目にしっかりしたモノづくりと、変なもの置き場にあるような理外の発想でのモノづくりとの反復横跳びを続けながら生きていけたらいいなと思います。